• 盤上の星

    涼しく感じる時間が増え、夕飯に火を使っても汗をダラダラかかなくなった。そうなると夕飯前にさっさとおふろを済ませ、寝るまでの時間をダラダラ過ごす楽しみが増える。夏の昼がすきだけど、秋の夜もいいな。

     

    暑さの残る夜、テレビでマイケル・ジャクソンのライブ映像が流れた。音楽やMVはやっぱりかっこいい。研究熱心で進化を続ける努力はすごい。その原動力は一体何だったのだろう。舞台上のスターを見て失神する熱心なファンもすごい。大人になってからミュージシャンや俳優の誰かに夢中になることが無くなったので、少しさみしい。そして羨ましい…これからの人生、何かに失神するほど夢中になれるのかしら、クールな私。ダラダラごろごろ。夏の夜。

     

    失神するほどでは無いけれど、ここ数年将棋にとても興味がある。まだ対局は出来ないので詰め将棋で勉強中。最近棋譜を読めるようになったので名人の棋譜を並べてみると、いろいろな発見があることがわかった。対局の中継を見てふむふむと楽しめるようになりたい。今まだ持っていない力を身につけたいと思うのは、強くなりたいということかもしれない。

     

    以前から読みたいと思っていた『聖の青春』を読んだ。重い病を抱えながら名人を目指し続けた棋士・村山聖さんのノンフィクション。病の苦しみや将棋界の厳しさも多く描かれているけれど、周囲の人たちにとても愛されている姿が特に印象的な一冊。私も彼に魅了され、久しぶりに寝る間も惜しんで読んでしまった。
    聖が人を魅了するのは、自分がどこへ進んでいるのかを常にしっかり把握して生きているからだと思う。目は一点を見つめ、身体はグイと前に出ている。きっと拳は強く握られている。カッコいいって強いってそういうことなんだ、と痛感する。自分はどうだろうと考えると目が泳いでしまった。起き上がらなくては。
    失神するタイプではない。けれど、静かに憧れ焦がれる。
    歌わないし踊らないけど、私にとってのスター。
    この夏出会った盤上の星の話。

     

     

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    『聖の青春』(大崎善生/講談社文庫)